研究概要 |
顧客の製品嗜好の多様化や製品ライフの短期化に伴い,今日の生産企業には多種少量の製品を,顧客需要に柔軟に対応しながら生産する仕組みが求められている。しかしながら,顧客要求を生産プロセスに的確に反映させる仕組みの不整備や,生産プロセス内での仕事の進捗状況をリアルタイムに可視化する仕組みが十分でない為に,プロセス内での仕掛在庫の増大や納期遅れの発生といった,システムのパフォーマンスを低下させる事例が散見される。 本研究では,このような問題意識のもと,RFIDタグ(無線ICタグ)を活用して,顧客からの"注文情報"と"モノ"とを一体化させ,受注から出荷までの生産プロセス全体をコントロールする"注文誘導型生産システム"の構築研究を2ヶ年に渡って実施した。研究の具体的な成果は以下のように要約される。 1.製造プロセスにおけるモノと情報の流れ管理する為の基本ルールとなる"3つのユニット化概念(モノのまとまりのユニット化,作業領域のユニット化,時間の区切りのユニット化)"を提案した。この3つのユニット化概念は,市場からの多様な要求(注文)に柔軟に対応する生産システムを構築するとの狙いのもとで,製造プロセスにおけるモノと情報の一体化した管理ならびに製造プロセスにおけるモノの流れの整流化・可視化を実現するための概念と言える。 2.更に,注文ユニットに添付されたRFIDタグを利用して生産実績(生産プロセスおける仕掛在庫状況や製造リードタイム等)をリアルタイムに把握し,生産プロセスにおける改善課題を可視化するための方法論を考察した。 3.上記の理論考察に基づいてシステムを構築し,これをエンジン部品の金属加工プロセスに試験導入した。その上で,システムの有効性の検証を行うと共にシステムの問題点を明らかにしている。特に,有効性の観点では,在庫削減と納期遵守率の向上に資するシステムであることを確認した。
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