研究概要 |
本研究は,固体表面間の接触において,マクロスケールからメゾスケールまでの真実接触部をスパッタ薄膜の移着を利用して,数nmの精度で検出することが本研究の一つめの目的である.二つめの目的としては,MD法(分子動力学法)を用いた接触シミュレーションとSPM(走査型プローブ顕微鏡)を用いた接触実験を行ない,原子・分子間の相互作用の及ぶミクロスケールの接触を見極めることである. 1.真実接触部の検出については,滑らかな鋼球を滑らかなガラス平面にヘルツ接触させる実験を行なった.この結果,スパッタ薄膜を用いる方法により,横方向で数nmの精度で接触部を検出できることを確認できた. 2.MD法を用いた接触シミュレーションとSPMを用いた接触実験については,次の通りである. (1)MD法によるシミュレーションは,SPMでの実験を考慮して,SPMのカンチレバーの先端と平面試料が接触するモデルを作成した.モデルは,先端半径が10nm,材質を金とし,押し付け速度なども考慮しながら計算した.結果は,接触圧力が負のときにおいても接触がみられた.これは,原子間相互作用力によるもので,マイクロスケールの領域において特に顕著になる力であると考えられる. (2)SPMによる接触実験は,金をコーティングしたカンチレバーとガラス表面に金をスパッタした試料間の吸着力をSPMのフォースカーブにより測定した.シミュレーション結果の値は測定値の範囲に含まれるものの,明確に一致する結果を得ることができなかった.このことは,真空中で実験を行なったり,表面の水吸着分子の除去も行なったりしているが,十分に水分が取り除かれているか,試料の静電気の影響,カンチレバー先端のチップ形状の影響などによるものと考えられるため,今後もさらにデータを積み重ねるとともに,試料表面のエネルギーを考慮した解析とも併せて検討を行っていく予定である.
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