研究概要 |
ダンパシールは,一般的に使用されているしゅう動面がスムーズな平行環状シールに比較して,漏れ流量が少なく,ふれまわり運動を抑制する接線方向力が大きいなどの特長がある.本研究では比較的解析が容易な四角穴しゅう動面パターンを有するダンパシール(以下,四角穴付きダンパシール)を対象として,壁法則と混合距離仮説に基づき導出された乱流係数を適用したナビエ・ストークスの運動方程式と連続の式とを基礎方程式として数値計算により静特性(ロータが自転のみでふれまわり運動していないときの,漏れ流量,すきま内圧力分布)を理論的に解析した.その際,シールしゅう動面の四角穴段差部を液体が通過するときのエネルギー損失を考慮した.また数値計算結果の妥当性を検証するための実験も行った.以下に研究成果の概要をまとめる. 1.改良した実験装置を用いて,平行環状シール(スムーズシール),円周溝付きシール,及び新たに製作した四角穴付きダンパシールの3種類のシールについて,それぞれの静特性及び動特性(ロータが自転とふれまわり運動を同時に行っているときに,ロータに作用する動的流体力,動特性係数)を実験的に解析した. 2.上記3種類のシールについて,静特性を数値計算し,実験結果との定性的・定量的一致をみた.これにより本解析モデルの妥当性が検証された.さらに3種類のシールの結果を比較することにより,四角穴付きダンパシールの特長を明らかにした, さらに本解析モデルを用いて平行環状シールと四角穴付きダンパシールの動特性を理論的に解析した.その結果, 3.各シールの動的流体力,動特性係数は実験結果と定性的に一致した.また動特性係数で重要である主対角減衰係数は計算と実験で定量的にも一致した. 4.四角穴付きダンパシールについて,本解析モデルを用いて,周方向流れに直交する段差部でのエネルギー損失,及び軸方向流れに直交する段差部でのエネルギー損失がそれぞれ静及び動特性に及ぼす影響を理論的に解析した.その結果,前者はおもに動的流体力の接線方向成分(ふれまわり運動を抑制する減衰力)の増加に寄与し,後者はおもに漏れ流量の低減に寄与することを明らかにした.さらにこの結果から,漏れ特性及び減衰特性を向上させるためにシールしゅう動面に設ける穴の寸法,数などに関する設計指針を与えた.
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