研究概要 |
生体適合プラズマ放電部や下流域のラジカル輸送機構およびラジカルの機能性を利用した滅菌機構の解明を行った.これらの結果をもとに,新たな医療用滅菌システムを開発し,工学的学問体系の構築と実用化への展開を図った.これらの結果は,学術論文5件,国内特許6件,国際特許1件にまとめた.得られた研究成果の概要を以下に示す. マイクロ波放電下流域に形成される低温のラジカル流動場を新たに構築した超高感度分光システムにより分析し,作動ガスの励起種やイオンが支配的な領域,作動ガスと周囲ガス混合の領域,極めて微弱な励起種存在域の3つの領域があることを明らかにした.また,ラジカルにより滅菌が可能であることを示すと共に,細胞壁の損傷が死滅因子である事を定量的に明らかにした.この結果は,Applied Physics Lettersに掲載されると共にセレクト論文集に特筆すべき論文として選出された. 誘電体バリア放電による医療用カテーテルを模擬した細管内の滅菌システムを開発した.本システムを用いて,医療用滅菌インジケータとして利用されている耐紫外線・耐熱性細菌芽胞を利用して,細管内壁を管壁温度70℃以下,滅菌時間5分以内で滅菌を行えることを示し,低耐熱材質を用いた医療用カテーテル滅菌システムの実用化に目処を付けた,また,ラジカル輸送に関する数値モデルの構築と解析を行い,細管内部に形成される生体適合プラズマ流のストリーマによるラジカル生成プロセスや壁面に帯電した荷電粒子の緩和過程におけるラジカル拡散プロセスについて明らかにした.さらに,励起化学種の拡散・輸送状態の分光解析と流動場の可視化より,細管内部に誘起された流動場がラジカル輸送の要因となっていることを解明した.
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