研究概要 |
主流乱れの強さとスケールが変化したときの境界層遷移のを調べるため,風洞による実験を行った.風洞は試験部に長さ2m厚さ10mmのアルミ板を挿入し,それを試験壁として用いた.試験壁の上端には前縁を有し,試験壁の片面に発達する境界層に対し煙による流れの可視化と熱線流速計による測定を行った.主流乱れはノズル上流と下流に設置した乱流格子で発生させた.撹乱の成長にはテストセクションの圧力勾配が重要であることがわかり,そのため,圧力勾配を精度良く調整して実験を行った. ノズル上流に乱流格子を設置し,上流に向け噴流を噴出させ前縁付近での乱れ強さが0.5%となるように調整をした結果,昨年度観察された通り,局所的で波面が流れ方向と垂直な波状の撹乱が発生し,それがA型の撹乱に変形して崩壊し,乱流斑点が発生することが可視化により確認できた.この波状の撹乱は流れ方向に波数と位相速度を可視化画像から求め,線形安定理論と比較した結果,成長が予測されるトルミーン・シュリヒティング波と一致することがわかった.また,熱線流速計により境界層内の乱れ分布を測定した結果,波状の撹乱が発生する位置での高周波成分の乱れ分布がトルミーン・シュリヒティング波の振幅分布とよく似ていることを月と止めた.このことより,主流乱れ強さが0.5%程度の場合,局所的な二次元線形撹乱が発生し,それがすぐに三次元化して乱流に遷移することが明らかとなった.また,乱れ分布測定で現れた低周波変動はnon-modal撹乱と考えられるが,この撹乱は乱流遷移に直接的な関与をしていないことも示唆された.
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