研究概要 |
本研究では,乱流に影響を及ぼさないような微小な粒子の運動への乱流からの影響を一様乱流中を落下する粒子の速度を計測することによって調査した. 一様乱流は,当研究室で開発した箱型乱流発生装置によって生成した.長方体容器に設置された4組の高速に回転する格子攪拌羽根によって,4組の回転格子に囲まれた部分で,平均速度が乱れ速度に比べほぼ無視できるほどの一様乱流場を生成することができる.羽根の回転数は自由に制御で高レイノルズ数の流れを実現できる.この乱流中を落下する粒子を高速度ビデオカメラで測定し,粒子画像計測法(PTV)で粒子の落下速度を測定した. 本研究では特に,平均粒子落下速度を乱流の強さを変えながら,静止流体中の粒子の終端速度と比較しながら,乱流の粒子運動への影響を調べた.粒子には,比重の異なるガラス粒子とPMMA粒子を用い,直径はともに100μmで,乱流渦の最小スケールであるコルモゴロフ径より小さく,粒子周りの流れは一様流中に置かれた粒子周りの流れと同じとみなせる.乱流の乱れ強さを変化させることで,粒子の空力学的応答時間と乱流の特性時間の比(ストークス数)を変化させながら,平均粒子落下速度の終端速度に対する増減を調べた.過去の数値計算では時間の比が1付近で平均粒子落下速度の増加が最大になることが報告されている.しかし,本研究ではガラス粒子の場合にその変数範囲で逆の傾向を示し,最大2%の減少が観察された.一方,PMMA粒子は最大15%増加を観察した. 本研究の最重要結果は,ストークス数のみで乱流の粒子運動への影響を評価できないこと,これまでの数値計算の結果のみでこの影響をモデル化できないことを明らかにしたことである.今後は,調査する粒子の種類を増やし,粒子の終端速度と乱流の乱れ速度の比などにも注目し,継続的に研究を進めていく.
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