研究概要 |
本研究では,ディジタルホログラフィを用いて単眼で3次元空間内の流速分布を計測できる高精度ダイナミック3D-PIVアルゴリズムの開発を行い,数値シミュレーションによる性能評価および構築した観測装置を用いる実証実験により開発手法の実用化を図った. まず,数値再生した再生像空間において可視化トレーサ粒子の時間追跡を可能にする時系列ホログラム観測装置を構築した.カメラレンズを外した高速度カメラをインライン型レーザ照明装置と組み合わせ,空間分解能の高い時系列ディジタルホログラムを時間分解能高く記録した.次に,高数密度微小トレーサ粒子群の検出法を開発した.相対位相情報を基とした再生像の画像化を行い,再生像空間内に高密度に分布する粒子群を明瞭に再生することが出来た.数値シミュレーションによって,観測できる対象粒子数密度を従来の4倍程度に拡大することができ,奥行き位置および粒径測定精度も改善されることが示された.さらに,3次元非定常流れの流速分布計測法を開発した.1つは,検出した粒子位置を時間追跡する従来の手法で,上述の相対位相情報に基づき再生像空間を構成することで粒子位置検出精度の改善を図った.相対位相情報は通常の光強度情報よりも粒子像の奥行き方向の伸びが小さく,奥行き位置検出精度が10-20μmに改善されることが示された.もう1つは,再生像空間の光強度時間変化から粒子移動量(流速)を直接時空間微分法で捉える方法である.奥行き方向流速成分を精度よく検出できるこの手法を立方体内回転流の観測実験に適用したところ,容器内の3次元流動の瞬時構造が精度良く観測できた.また,応用計測技術として,流体中を運動する微小な繊維状物体の姿勢計測法へ拡張した.姿勢計測としてはカメラから2次元計測可能な面内角度と計測不可能な奥行き角度の2つの角度で姿勢を表現したが,何れの角度についても1deg程度以下のRMS誤差で計測できることを示した.
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