研究概要 |
本研究では,混合気体に対して,より正確な固体壁面干渉解析を行うため,気体分子の運動解析にはDSMC法を,気体-固体分子干渉には分子動力学法を用いることにより固体壁面の適応係数を決定し,それを基にして混合比や適応係数の変化がチャネル内の流量に与える影響を調べた.その結果,気体の混合により,滑り係数が上昇することが分かった.特に,軽い原子に比べ,重い原子は,わずかに混合されるだけで,滑り係数の急激な増加をもたらした.また,混合気体の質量比が大きいほど,滑り係数の上昇率が大きいことが分かった.次に,これまで研究これまで研究代表者らが行ってきた分子動力学法に基づいた気体(窒素分子)-固体(白金)干渉解析に関する研究をもとに,入射気体分子が壁面で反射後どのような分布になるのかを詳細に調べた。まず,接線方向運動量適応係数について,入射分子の速度との関係を調べた.その結果,適応係数は入射分子の速度に依存し,その値が大きくなると,適応係数は小さくなることが分かった.また回転エネルギー適応係数について同様な結果が得られた.そこで次に,一定速度あるいは回転エネルギーを持った入射分子が清浄な壁面を反射した際,その分子のもつ速度あるいはエネルギー分布が,どのような形になるのかを調べた.その結果,反射後の分布は,拡散反射分布と,入射分子の速度あるいはエネルギーをある程度保持した分布の二重分布形を示すことが明らかとなった.一方,既存のモデルであるCLL反射と,今回の解析結果との比較を行ったところ,CLL反射モデルによる反射分布は解析結果より得られた二重分布形を表現し得ないことが示された.以上の結果を踏まえ,解析結果より得られた二重分布形を表現し,入射分子の速度あるいは回転エネルギーに依存する適応係数を含む簡易反射モデルの構築を行った.
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