研究概要 |
本年度は,昨年度までの成果を踏まえ,印加磁場下における磁性流体とMR流体中の超音波伝播速度変化,磁性流体中の減衰率変化を精密に測定した。 磁性流体とMR流体中の伝播速度は,磁場印加によって増加した。また,磁場の増減によるヒステリシスも存在した。この伝播速度変化は,流体中に形成されるクラスターが密接に関係していると考えられる。MR流体では,内部粒子が大きく,磁場印加で半固体になるため,磁性流体よりも大きな伝播速度変化が得られた。クラスターの形成過程も,磁性流体では鎖状クラスターの成長が見られたが,MR流体では瞬時に塊状クラスターが形成される。磁場を除去した時も磁性流体ではクラスターは崩壊せず保持されているが,MR流体では内部粒子が大きいため,崩壊に転じるという両流体に特徴的な変化が得られた。 磁性流体中の減衰率変化においても,内部粒子の挙動を推測しうる特徴的な結果が得られた。鎖状クラスター方向に超音波が伝播する時,磁場印加後に減衰率は大幅に増加しており,内部粒子が鎖状クラスターの形成に向けて活発に運動していると考えられる。鎖状クラスターが形成されると超音波の減衰に与える影響は小さくなり,減衰率変化も小さくなる。また,鎖状クラスターに垂直に超音波が伝播する時は,超音波の減衰に与える影響が非常に大きく,その結果も複雑であった。 このように磁気機能性流体中の超音波伝播には,内部に形成されるクラスターが密接に関係していると考えられる。今後,MR流体中の減衰率も測定し,磁性流体と比較することを考えている。この超音波伝播のメカニズムは理論的にも非常に複雑であり,その解明にはさらなる詳細な実験と理論的な検討が必要である。
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