研究概要 |
軸流圧縮機に発生する旋回失速を能動的に制御すると共に,失速に突入する非定常過程を把握するために,多段圧縮機を用いた実験的研究を展開した.主に,(1)多段圧縮機に発生する失速予兆現象の観測と形態把握,および(2)衝撃波管を圧縮機出口に接続して圧縮波を印加することで圧縮機系を瞬間的に失速させ,その非定常流れ場と失速突入・回復過程の実験的把握を行った.まず(1)に関しては,単段圧縮機の失速突入に関する従来の豊富な実験データと比して,多段機特有の現象をいくつか発見し,その構造と内部流れに及ぼす影響を調査した.動静翼列のスタッガ角を精度良く変更できる供試圧縮機の利点を活かし,各段翼列の負荷配分を変更した様々な条件下で失速突入過程を調査した.その結果,後段の負荷を増大させて後方より失速させた場合でも全段失速に至る予兆現象は初段前方に出現し,能動制御法が有効に機能することが期待された.また,二段目の負荷配分のみが極端に軽い場合には,二段目動翼のみが低流量域まで失速せず,系全体の不安定と重畳する形で,いわゆるモーダル波のような周方向に長いスケールを持つ不安定波動が観察された.今後の研究対象として非常に興味深い現象である.(2)に関しては,同心二重軸を持つ圧縮機-貯気タンク連結実験設備を完成させ,圧縮波の印加試験を実施した.背圧のステップ状上昇によって圧縮機翼列は急速に失速に突入し,過渡現象終了後に定常運転点に回復する過程を模擬することができた.また,旋回失速とサージングが共存して交互に発生する現象も確認され,圧縮機の安定性と過渡現象に関して重要な現象を幾つも見出すと共に,今後の研究課題を数多く提案することができた.本研究の成果は,引き続き,失速,サージング現象の実験研究に活用されることが期待できる.
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