研究概要 |
内径1.5mmの銅管を用い,ターン数6,加熱・冷却部長さをそれぞれ65mm,断熱部長さ270mmのループ型ヒートパイプの製作した.加熱部は流路外部に巻きつけたワイヤヒータの通電加熱による一様加熱,冷却部は冷却水を流して等温条件とした.作動流体にはエタノールを用い,流路内をいったん真空にしてから一定量を封入し,水平姿勢の状態で実験を行い,各部の温度を計測し有効熱伝導率を求め,熱輸送特性を評価した.ドライアウト対策には加熱部の作動流体の還流作用を促すものとして,ワイヤーウィックを用い,断熱部から加熱部にかけて設置した.基本的なウィック挿入の効果としては,供給量はあまり多くないが液の供給作用があり,流れの方向付けの作用もあることが分かった.しかし,ウィック自身が流動抵抗となるので,過度な挿入はかえって性能低下を引き起こすことが分かった.加熱部熱流束の違いについては,ウィック挿入により低熱流束時に循環流を誘起し性能向上が見られ,中・高熱流束時には動作領域の拡大は見られたが,その流動抵抗により有効熱伝導率が低下した.また,ウィック本数・長さに注目したところ適切な値があることが確認された. さらに,宇宙環境下での利用を想定し,低温度下で動作するループ型ヒートパイプとして,作動流体にアンモニアを用いたステンレス製の実験装置を新たに製作した.冷却部を約-30℃,加熱部を5〜25℃としてウイックなしの実験を行った.垂直下部加熱姿勢時の実験においてはその熱輸送能力はエタノールを上回ることが確認された.水平姿勢においては,ウィックを挿入することにより微少ながら自励振動が確認されたが,途中で動作モードが変化したり,加熱部でドライアウトが生じるなど,安定した再現性が見られなかった.低入力熱量時(30W程度まで)には安定した動作を継続させることができたが,それ以上ではドライアウトしてしまった.
|