研究概要 |
本年度の研究においては、貯氷過程で形成される氷粒子層の不均質性がみず道の形成に及ぼす影響を検討した.貯氷層の上部から温水を散布して氷層を融解する際のみず道の形成においては、温水が溶液であることの影響は二次的であると考えられるため、本年度の研究においては、アルコール水溶液のアイススラリーを長時間貯蔵する際に形成されると想定される不均質な氷層を対象にして、真水の氷と温水による検討を行った. まず、氷層内の氷径が均一な場合について、さまざまな氷径で実験を行なった.その結果、温水散布直後では,水路が氷層を貫通しておらず,広範囲で氷層を融解する.そして局所的に空隙率の高い場所を見つけて水路が氷層を貫通する.その後、時間経過と共に水路が下方に進行しつつ、空隙の広い場所を探しながら横方向に太く広がる傾向をみせた.どの氷径の実験でも、水路が氷層を貫通してからは,水路壁面からのみ融解している様子が見られた.また,氷径の小さい氷層の方が水路が複数本できる傾向が見られ,水路が氷層を貫通するのにかかる時間も長くなることが分かった.さらに、氷径が大きい場合、氷層内の広い範囲で融解が起こるために融解速度が速く、一方、氷径の小さい場合は氷層内に水路ができるのに時間がかかり、融解速度が遅くなることが分かった. 次に氷層内の氷径が上下2層で異なる場合について実験を行なった.上層に氷径の大きい細氷を,下層に氷径の小さい細氷を充填し、温水を散布したし水路が氷層を貫通するまでの時間は、氷径が均一な氷層の場合よりも長時間かかることが分かった.また、2層の境界では、水路が分岐している様子が見られた.以上のことから、氷径の大きな上層では、氷径の大きな均一層と同様に広い範囲で融解が起こるものの、氷径の小さな下層との境界に水路が到達すると、氷径の小さな均一層と同様に、水路が出来るのに時間がかかるため、融解が遅れ、全体の融解速度は、氷径の小さな下層に律則されることが分かった.
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