研究概要 |
衝突噴流による高温面の急速冷却に関する実験を行った.実験範囲は,噴流速度3-15m/s,噴流液温20-95℃,噴流径2,3mm,高温面温度250-600℃,高温面材質,銅,黄銅,炭素鋼の3種類で,試験流体として水をもちいている. 高温加熱面を衝突噴流で冷却するとき,冷却開始すなわち高温面の濡れ開始の状況は,高温面の温度が熱力学的過熱限界温度以上にある場合でかつ冷却能力が大きい場合とそれ以外では大きく異なることを高速ビデオカメラでの観察から明らかにした.熱力学的過熱限界温度以上でかっ冷却能力が大きい範囲では,噴流接触後高温面は非常に短い周期で濡れと乾きを繰り返しながら緩やかな冷却状態の継続となっている.固液の接触直後の表面温度が,過熱限界温度以下になると安定な濡れは確保されるが,固体側からの熱供給量が,限界熱流束以上の条件下では,安定な濡れは拡大できずに局所的な領域に留まる.濡れが拡大し始めるまでの時間を迄の滞在時間t*と定義し,その時間を推定する式(1)とその時の表面温度Tw*を推定する式(2)を提案した. (√<(ρcλ)_slt^* >(T^*_w-T_<sat>))/((ρcu)_l(T_<sat>-T_<liq>))=14((2r^*)/d)^<0.72>{(ρcu)_l(T_<sat>-T_<liq>)}^<-0.41>(T_b-T_<liq>)^<-0.99> (1) (T_*-T_<sat>)/(T_b-T_<liq>)=157(((ρcλ)_S)/((ρcλ)_l)^<-0.49>)((2r^*)/d)^<-0.49>{(ρcu)_l(T_<sat>-T_<liq>)}^<0.14>(T^b-T_<liq>)^<-0.68> (2) 本研究で改善された2次元非定常逆問題解を利用して,濡れの拡大が起こっているときの表面温度の変化と最大熱流束の大きさやその位置の移動を正確に測定することができた.また,濡れ範囲内での最大熱流束が現れる位置をより正確に把握することが可能となった. 安定な濡れが確保された状況下で達成される最大熱流束q_<max>は,高温面の材質によってその大きさが異なっているけれどもほぼ同じ特性で変化することおよびその特性は定常の衝突噴流沸騰系の限界熱流束q_cを用いて次式で近似できることが明らかになった. (qmax)/(qc)=1-5.5√<((ρcλ)_l)/((ρcλ)_s)> (3) なお,ρ,c,λはそれぞれ密度,比熱,熱伝導率である. また,噴流衝突後高温面が直ちに濡らされる条件下での最大熱流束は,上記の式では整理できなかった.これは,急激な濡れ面の移動を逆問題解が十分追従できなかったためと考えられる.
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