研究概要 |
吸収冷温水機の吸収剤には無機塩類水溶液が用いられており,高濃度の水溶液と低濃度の水溶液間の濃度差を駆動力として冷熱を発生させている,低濃度となった水溶液を再び高濃度に戻すプロセスが再生器である.再生器中では沸騰現象が生じているが,ニ成分系塩類水溶液の沸騰現象を扱った研究例は少なく,水溶液の濃度は高くなると沸騰熱伝達特性が著しく低下することが知られている.しかしその基本的なメカニズムは未解明である. 沸騰熱伝達を特徴づける要因の一つに発生気泡の挙動がある.その挙動を知ることは沸騰現象の素過程を見極めるために重要である.しかし不揮発性の溶質を含む水溶液の沸騰は溶質による沸点上昇や気液界面での溶質の濃縮など不確定要素を多く含む現象である. 伝熱面〔固相〕に形成される気泡底部には,気相,液相および固相に接する三相界線が存在する.この三相界線近傍のメニスカスを有する薄い液膜内で急速な蒸発が生じ,その結果,気液界面に濃度勾配が発現し,気泡成長に大きく影響する.しかし観察の困難さから実験による考察はすくない. 本研究は気泡底部に形成される三相界線近傍を透明伝熱面を用いて気泡の底面から観察することで,塩化リチウム水溶液の沸騰時に気泡成長における三層界線近傍の気泡構造が気泡挙動に影響する因子を明らかにすることを目的とした. その結果によると,水の沸騰に比べ,気泡成長後期から離脱までの挙動に違いが観察され,気泡表面上で表面張力勾配(濃度差マランゴニ)に起因する力が発生し,離脱気泡が伝熱面から引きはがされるようなリフティング共同が観察された.その影響を受けて,水の気泡成長に比べ,気泡成長の前期と後期における塩化リチウム水溶液の気泡成長速度は低下した.さらに,気泡成長速度の低下により,離脱気泡径は水に比べると小さくなる.また.塩化リチウム水溶液の気泡離脱頻度は気泡休止期間が水と比べて長くなるために低下した.
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