研究概要 |
溶融金属と水が直接接触した際の相変化現象を詳細に観察し,相変化のミクロ構造の解明と,局所で開始する現象の伝播のコヒーレント性を支配する因子の把握などを目的として,常温の水に液滴規模の溶融すず液滴を滴下する実験を行った。すず温度が623℃,質量1.56gを,水槽中に内径16mmの試験管を設けて滴下し,試験管中での蒸気爆発の開始過程を観察した.現象は,溶融金属と水の自発的蒸気爆発とみなすことができ,トリガー機構の解明に他ならない.そこで,この現象の解明を目的として,マクロレンズを装着した高速度ビデオカメラによる撮影を,蒸気爆発が開始される位置に焦点を当て,約0.1mmの空間分解能と,最速62.5μsの時間分解能で現象を撮影を行い,映像の解析を行った.その結果,液液の塗れ面の存在の確認に続き,以下の結論を得た. (1)自発的な蒸気爆発では,蒸気膜の収縮による蒸気膜厚さの減少が原因で蒸気膜が局所的に崩壊する様相は観察されず,何らかの高温液の突出が原因で蒸気爆発が開始されるように観察された。 (2)底部から崩壊する場合の写真から,すずの飛び出し部または蒸気泡の成長は,一定ではない. (3)縁から崩壊が開始するときには,微小の蒸気泡の発生と,すず飛びだし部がクレーター状となることが観察された.局所の崩壊の開始が確認できる。窪みの直径は0.37mmと0.45mmであり,蒸気泡は直径約0.12mmの球形である.
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