研究概要 |
ジャークとは加速度の変化率のことであり,加加速度や躍度とも呼ばれる運動の急峻さを表す物理量である.これまでジャークを計測するための簡易で実用的なセンサがなかったため,従来は加速度センサの出力を微分するなどして推定して利用されていた.本研究では圧電体を利用してジャークを計測する独自に開発した測定方法により,簡易で新しいジャークセンサを開発することを目的とし,当該研究期間内において,シミュレーションを併用してセンサ構造を検討し,原理の確認のために用いていた,既存のバイモルフ素子のたわみ変形を利用したセンサからバルク素子の圧縮変形によるセンサに変更し,実際に試作した.バルク素子により,正弦波振動に対する定常的な出力特性を調査した結果,当然のことながら,バイモルフ素子よりも広い帯域で測定可能となった.本研究のジャークセンサの測定原理は,両端電極を短絡させた圧電素子が慣性力により変形するときに,圧電効果によって発生する電荷が短絡路を通じて流れるときの電流値により測定してジャークを計測するというものである.新しくバルク素子によりセンサを試作した結果,以前よりも低い周波数帯域も計測できるようになったが,以前まで用いてきたシャント抵抗による電流測定では,低周波数領域におけるゲインが増大してしまうという問題が明らかになった.またシャント抵抗を使用せずに入力抵抗の大きいオペアンプにより製作した電流計測回路を利用することにより,この問題を回避できることも明らかにした.さらに,本研究の測定原理は,チャージアンプを内蔵しない市販の電荷出力型の加速度ピックアップ素子をそのまま利用できるという可能性を有している.実際に市販の加速度センサのピックアップ素子を使ってジャークがアクチュエータ測定できることを示した.最終的には本センサを実用化するための課題を明らかにした.
|