研究概要 |
稼働中の機械あるいは構造物に作用する動的荷重の高精度推定手法の提案,その手法を援用した異常診断手法の提案,それらの数値的及び実験的な検証を行った. 1:動的荷重の推定手法の提案 境界要素法を援用した推定理論と運動方程式に基づく推定理論を構築した.境界要素法による逆問題解析の場合は,領域内部の変数も未知数にして定式化した.運動方程式に基づく手法の場合は,対象物の物性値が比較的均等に分布した系では精度の良い結果が得られないことがわかったので,物理的考察に基づいた拘束を導入する手法を提案した. 2:推定手法の数値的及び実験的検証 一様はりを両端付近でばね支持した振動系を構築し,動的荷重の推定を行った.その結果,境界要素法を援用した手法も運動方程式に基づく手法も,外力の作用位置に関する拘束を入れると妥当な同定結果が得られることが数値的及び実験的にわかった. 3:外力同定を援用した異常診断手法の提案 精密診断において,初めに外力同定を利用して異常の発生位置を絞り込み,その後に,従来の推定手法を用いて異常原因を特定する手法を提案した.発生位置の絞り込みにおいては,異常を外力の付加と考える際に,初期の異常は局所的に発生しており,外力は構造物の有限要素モデルの一要素にのみ作用すると考えた. 4:診断手法の数値的及び実験的検証 実験装置に対応するはりを取り上げて数値的に検討したところ,異常発生位置を絞り込まない場合は異常原因の特定が困難な場合があるが,絞り込みを行い,その要素における評価関数の変化を調べることで,異常原因を特定できることがわかった.実験的には,提案手法をそのまま適用すると正しい異常原因が推定できない場合があったが,同定結果に対して感度の低い測定データを省くことで,正しい異常原因の推定ができることがわかった.
|