研究概要 |
先ず,磁気軸受で支持した回転軸の安定性解析と定常応答解析を行えるソフトウエアの開発を:行った.この解析により,コントローラのゲインを変化させると,ある値から急激に安定余裕1が小さくなり,不安定振動発生に近づくことが判明した. ソフトウエア開発と並行して,小型磁気軸受-ロータ試験装置を完成し,この実験装置の制御パラメータを変更して,ロータを安定領域から徐々に不安定領域に近づけて,安定余裕指標(感度関数,感度関数最大特異値,ゲイン余裕,位相余裕,減衰比,安定余裕距離)を測定し,システムの安定性に何ら不安を抱かせない領域(ゾーンA),安心して長期連続運転可能領域(ゾーンB,時期を見計らって点検の必要を感じる領域(ゾーンC),危険領域(ゾーンD)に対する定量的評価値を求めた. また,実験装置のコントローラゲインを変化させると,ある値から急激に安定余裕が小さくなり,不安定振動発生に近づくことが判明した. これら数値解析による結果と実験による結果を比較したところ,安定限界に差異が認められた.この差異の原因を解析法と実験の両面から検討した.解析においては,安定性を支配するであろう軸の内部減衰を正しく評価できるように修正を行った.また,実験面では,4行4列の伝達関数行列を測定し,その最大特異値を求めた.その結果,伝達関数(感度関数)の最大特異値はその計測・演算過程が煩雑であり,感度関数最大値,位相余裕,ゲイン余裕は系の安定性の変化に追従することが明らかとなった.したがって,感度関数最大値,位相余裕,ゲイン余裕など簡便な方法を採用すれば,安定性評価を行えることを確認した. 「回転機械設計者のための磁気軸受ガイドブック」(日本工業出版)を英訳,出版(Magnetic Bearing Guidebook for Rotating Machine Designers, Touka Syobou/Japan Publications Trading Co., Ltd.))し、スイスで開催した第10回磁気軸受国際会議で紹介した.さらに,この内容の一部を,ISO/TC108(振動・衝撃)/SC2(機械の振動)/WG7(磁気軸受)Part4(磁気軸受設計ガイドライン)の日本案に採用した. 回転軸系が安定から不安定となる境界付近では,軸内部減衰が系の不安定性に重大な影響を及ぼす恐れのある.そのためこの解析では,通常の軸振動解析では無視される軸内部減衰をも考慮し,開発した解析ソフトウエアを以下のWeb上に公表した. http://sky.mech.kyusyu-u.ac.jp/〜kanemitu/QROT/NatVib.cpp http://sky.mech.kyusyu-u.ac.jp/〜kanemitu/QROT/ManualNatVib
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