研究概要 |
本研究では,遠隔操作型のロボットマニピュレータが対象物を安定して把持し操作できるような制御系の設計を目指した.安価な,フォースフィードバック付きのジョイスティックを用いて操作することを検討したが,操作者の操縦を受け入れる位置や姿勢の自由度が3しかなく,反力を提示するための自由度は2しかないので,それらを補完する機能を構成した. バイラテラル型マスタースレーブシステムが十分にその理想的な機能を発揮しているならば,人間・マスタ・スレーブ・環境の閉ループにおいて人間が適当なインピーダンス作用を持つので,たとえ瞬間的にスレーブ・環境間で過度な接触力が発生したとしても,操作者がその力を低減するようにマスタを操作し,これを回避する.しかし,マスタ側の自由度が十分でなく,このようなループが成り立たないときには,スレーブ・環境の閉ループにおいて過度の接触力を緩和するようなインピーダンス特性をスレーブが持たねばならない.そのために,従来のインピーダンス制御系の構成を修正し,同一構造で「位置制御」「力制御」「インピーダンス制御」を容易に切り替えることができる「修正インピーダンス制御系」を構成した.以下の実験を通して,対象物の位置や形状のモデルの誤差に対するロバスト性を確認した. 双腕で物体を持ち上げ搬送する作業実験 双腕マニピュレータで物体を操作するためには左右のマニピュレータがバラバラの作業をしては強調動作ができないが,左右のアームのバランスが崩れたときには操作者のジョイスティックの片側のみに大きな接触反力が提示され,操作者は無意識のうちに左右のアームのバランスを保つように操作していた. 弾性変形(曲げ)する物体を双腕で挟み込む作業実験 物体の反力(角軸方向の力+モーメント)が複雑に組み合わされていることがわかった.しかしながら,使用しているジョイスティックの力の提示は2自由度しかないため,オペレータに複雑な反力を提示するには不十分であることがわかった. 弾性変形する物体を挟み込み持ち上げる作業実験 スレーブに姿勢の拘束を与えると過度な接触力が発生する可能性があるため,それを緩和するように,姿勢の変化に対してやわらかいコンプライアンス特性を与えるようなインピーダンス制御を行った.スレーブの自律作用のおかげで過度な接触力が発生することなく,挟み込み,持ち上げ動作が可能となった.
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