研究概要 |
水平多関節型機構はSCARA型ロボットの機構として組立ラインで多用されているが,直交型と比較すると精度が格段に劣ると言われる.しかし水平多関節型機構は,設置面積に対して可動範囲が広いため,組立ライン上での応用性が極めて高く,最近ではライン上のインプロセス座標測定機としての可能性も期待されている.そこで本研究では,先端的な高精度要素技術を駆使した水平多関節型機構の機構設計を新たに行い,約300×200mmの作業領域にわたって1μmレベルの位置決め精度を持つ水平多関節型位置決め機構を実現するとともに,リンクパラメータの校正と位置決め精度評価を厳密に行って水平多関節型機構による位置決め精度限界を究明することを目的としている. 第1椀長さ250mm,第2椀長さ147mmとし,各関節の回転案内要素として,軸心の振れ精度0.05μmのエアスピンドルを採用し,その主軸をフリクションライブ減速機とDCモータで駆動する構成とした.角度検出分解能がθ_1軸720万ppr(0.18秒),θ_2軸144万ppr(0.9秒)のロータリエンコーダの目盛円盤を各関節の出力軸に直結し,関節角度をダイレクトに高分解能で検出する.また,関節が支持する腕の重心が常に関節の軸心と一致するような構造とした. 各関節軸を目標角度軌跡に追従させる位置決め実験を行ったところ,角度偏差が検出分解能の1ビット以内に収まり,分解能レベルの位置決めを実現できた.次に目標点への位置決めを30回繰り返し,手先に取り付けたレーザー光源のスポット光を2次元PSDに照射することで手先位置を検出して整定位置のばらつきを測定したところ3.5μm(3σ)となり,従来の水平多関節型機構に比べてばらつき楕円の面積を10%程度まで低減できることを実証した.なお,リンクパラメータの校正と位置決め精度評価については,次年度以降に実施する予定である.
|