研究概要 |
前年度の研究で,Pt(111)下地上にガスフロースパッタ法により堆積させたCo-Pt薄膜は,幅約10nmの柱状の粒子からなり,c軸が基板に対して垂直となるような結晶配向を持っていること,そのようなナノ粒子構造が7kOeという高い垂直保磁力を生じることを明らかにした. 本年度は,まず高保磁力の原因を探るために,熱処理条件を変化させたCo-Pt/Pt薄膜についてX線光電子分光(XPS)を用いて深さ方向の組成分析を行った.その結果,熱処理温度の上昇に伴って表面からCoの酸化が進行し,熱処理温度350℃では,ほとんどのCo原子が酸化していることが明らかになった.保磁力が最大となる熱処理温度は250℃であり,この温度ではCo-Pt層全体が酸化することなく,粒界のみに酸化層が析出することにより,磁区の分離が促され高保磁力を生じていることが明らかになった. 次に,Pt下地上へのCo-Ptの成長メカニズムを探るために,Pt下地にArイオンシャワーを施し,格子定数および表面モフォロジーを変化させCo-Pt成長への影響を調べた.Arイオンシャワー照射時間によりPt下地の格子定数が変化するが,それに伴ってCo-Ptの格子定数も変化し,Co-PtはPt上にエピタキシャル的に成長していることが裏付けられた.保磁力は格子定数とともに大きくなったが,この挙動はこれまでの磁気異方性に関する報告から予想されるものとは異なった.また,角型比はCo-Ptの格子定数とではなく,Pt下地層の表面粗さと相関があり,表面粗さが大きいほど角型比が小さくなることが明らかになった.これはCo-Ptナノ粒子の結晶配向のばらつきで説明できる.以上のように,Pt下地の表面モフォロジーはCo-Ptの成長において非常に重要であり,これを制御することにより超高密度磁気記録に有利なCo-Ptナノ粒子の規則配列を実現できる可能性が示された.
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