研究概要 |
固定モニタカメラは現在では犯罪の抑止や犯罪捜査,遠隔地の状況把握に不可欠な機器となっており,プライバシーの問題に対しても,技術的な解決手段を確立する必要がある.本研究では,映像中の人物や車などを,通常の画像表示プログラムでは識別不可能にし,犯罪捜査などで必要が生じたときには,パスワードを投入すれば元画像が復元できる仕組みを実現し,プライバシー問題の解決手法となることを示した. 1.スクランブル処理および透明化処理: 背景差分法で抽出した移動物体部分に,スクランブル処理(ピクセル入換)および透明化(背景画像に置換え)を行いマスキング画像を生成した.マスキング画像は一般のビューアで見た場合は,物体が何であるかは分かるが,誰であるかや車のナンバーは識別不可能となる. 2.電子透かしを用いた復元用データの埋め込み: 元画像復元のため,移動物体情報をJPEG圧縮し,電子透かしを用いてマスキング画像に埋め込んだ.このとき,マスキング画像には高い圧縮率を適用し,埋め込み画像には低い圧縮率を用いることにより,単一の圧縮率を用いる場合よりも約25%データ量が削減できることを示した.また,Nフレームの間同じ背景を用い,これにNフレーム分の移動物体情報を埋め込む仕組みを実現し,更に約1/2にデータ量が削減できることを示した 3.暗号化および復元: 移動物体の暗号化には,強固な暗号化手法であるAESを利用した.また,複数の人物や車が存在する場合に,特定の物体のみを復元し,他の物体はマスキングされた状態で残す手法を確立した. 4.移動物体抽出の高度化: 提案手法を有効に機能させるには移動物体を出来るだけ正確に抽出する必要がある.RGB値を用いた正規化距離による移動物体判別手法を提案し,直射日光による影の判別や,背景と同じテクスチャの移動物体の抽出漏れの防止に有効であることを示した.
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