研究概要 |
携帯電話端末は,国民のほぼ全員に普及しつつある.このような状況下では,非常に大きな周囲雑音が存在する環境での使用が想定される.このような場合,送話音声に大きな周囲環境雑音が混入し,受話側において音声明瞭度が劣化する.そこで,騒音環境下での高品質通話を実現するための騒音抑圧装置の導入が必要となる. 代表的な騒音抑圧法として,マイクロホンアレーを用いる方法やスペクトル・サブトラクション(SS)法などが知られている.マイクロホンアレーでは,騒音源数の増加に伴い,使用するマイクロホン数が増加する.これに対し,SS法は,単一のマイクロホンしか用いないが,ミュージカルノイズが発生するなどの問題が指摘されている. そこで,本研究では適応線スペクトル強調器(ALE)と適応騒音推定フィルタ(NEF)並びに適応線形予測器(LP)を使用する広帯域騒音並びに正弦波騒音の騒音抑圧方式の提案を行った.提案法は,無音区間検出の必要がなく,周囲騒音の特性変動にも追従可能である.本研究の主な研究成果は以下の通りである. 1.正弦波騒音を推定するためのALEにおいて相関分離パラメータを20ms以上に設定する必要がある. 2.ランダム性の強い広帯域騒音を抑圧し,音声のみを推定するALEにおいては,相関分離パラメータを数msに設定する必要がある. 3.正弦波騒音推定用ALEについて,正弦波騒音の基本周期に対応したタップのみを用いることにより演算量の削減が可能となった. 4.ALEを基本周期検出器に用いることにより,音声が混在した環境下での正弦波騒音の基本周期検出が可能となった.
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