研究概要 |
本研究は、新しい時代の地域、特に都市部における分散エネルギーシステムの在り方を評価するために、エネルギー需給システムを多主体の参加するシステムとして把握しモデル化と評価を行った。そこで、マルチエージェントによるアプローチと具体的な危機特性を反映するモデリングの2つの角度から接近を行った。 マルチエージェントベースの最適化システムでは、発電事業者,供給事業者,需要家(一般需要家およびコジェネレーションシステムによる自家発需要家)によって構成された電力取引市場に対して,市場価格などの変動の解析をマルチエージェントシミュレーションによって行った.ここで供給工ージェントは全て電力取引市場を通して電力の売買を行うものとし,相対取引は行わないものとした.また自家発需要家工ージェントには託送を認めた.供給工ージェントはActor-Criticによって学習しっっ利益最大化を行う.シミュレーションの結果,市場価格や発電量の収束する様子を明らかにした.また,CO_2排出権取引市場と電力市場の2つの市場が存在するモデルをQ-Learningを備えたマルチエージェントによるシミュレーションによって解析した.その結果,エージェントは自らが保持する排出権量内に排出量をおさめるように行動価値関数を修正し,収束することができた.また,電力市場と排出権取引市場の関係も見ることができた. 次に、地域分散エネルギーシステムは機器の特性や地域の需要パターンに強く依存することに鑑み、本研究においては、システム機器の部分負荷特性や経済性の制約等を非線形混合整数計画モデルで表現しモデル構築を行った。このモデルを気候特性の異なる日本の3都市17区に対して適用を行った.その結果,空調・給湯機器を全電化するケースHPと全オプションの導入を認めるケースFULLの場合,これら17地域を通じCO2排出量削減ポテンシャルと業務用ビル床面積の比率との間に統計的に有意な関係を見出すことができた.そこで,この関係を全国950市区に適用することで日本全体の都市部におけるCO2排出削減ポテンシャルの推計を行なった.結果として,日本の各市町村のCO2排出削減ポテンシャルは人口密度,経済活動に基づく業務用ビルの全建物床面積に対する比率のばらつきから大きく変化するものの,日本全体ではおよそ18.6%の排出削減ポテンシャルのあることが分かった.
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