研究概要 |
地球環境の保全は人類の将来にとって非常に重要な課題である。その中で人工衛星や航空機による地球観測は,重要な役割を担うリモートセンシング技術である。2006年1月24日に偏波合成開口レーダ(POLSAR)を搭載した日本の人工衛星ALOSが打ち上げられた。この衛星は世界最初の偏波合成開口レーダ衛星で,これに寄せられる期待は非常に大きい。取得されるデータは散乱行列である。この研究は散乱行列を使って偏波レーダ画像の判読方法を開発することにある。 18年度は,偏波レーダ画像判読の基本となる散乱行列の2次統計量,集合平均の独立情報量,その性質について理論的に詳しく検討し,散乱電力による画像分解方法を完成した。具体的には集合平均Covariance行列,Coherency行列について,固有値,回転不変量などを求め,4つの独立偏波情報を突き止めた。そして,4つの偏波情報をもとに散乱電力の分解を試み,表面散乱,2回反射散乱,体積散乱,Helix散乱にモデル分解した.この結果は従来の3成分モデル電力分解をさらに発展させて4成分分解が可能となることを示したものである。また,計算途中で起り得る不具合を解消し,安定した分解方法を確立した. この分解法を基に,新潟市や新潟大学近郊のPi-SAR偏波画像データ(L-band, X-band)を例にとって解析した。異なる行列形式を使っても同じ分解結果が得られることを確認し,普遍性のある解析結果を得ることができた。 さらに,偏波の基本から偏波データの利用方法を初心者にも分かるように取りまとめ,報告書冊子として完成した。
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