研究概要 |
【研究の目的】波動場の時空間勾配解析に基づき,観測点とその近傍での音圧の空間勾配,また時間勾配を検出し,波面の進行速度ベクトルおよび波源の自律的な分離を階層的に実現する一体型プローブを開発する. 【研究実績の概要】構造物に応力腐食割れが発生すると,疲労サイクルの増大に従ってその長さや深さが進行する.そこで亀裂や腐食の発生の初期の段階においてそれを検知する事が重要である.とくに炭素繊維強化複合材料にみられるように多層構造を持つものでは,層境界にそって進行するラム波を用いた非破壊検査が有効である.ところが,ラム波は音速が周波数によって異なる分散性波動であるため,時間の経過とともに入力パルスの形状が崩れ,亀裂や剥離腐食箇所かちの散乱波を検出することが困難となってきた.それを解決するために時空間勾配解析に基づく手法が寺本らによって提案された.本研究は,計測対象表面の法線方向の変位,法線方向の粒子速度,2つの互いに直交する面外せん断歪の4信号間の共分散行列のランクに着目した.その結果,ランク2のときは,亀裂や剥離腐食などが全く存在せず反射波が観測できない状況にある.ランクが3のときは,亀裂等が存在し,反射波が観測され,ランクが4のときは,その観測点のごく近傍に亀裂等の再放射源が存在することが明らかになった.そこで,上記4信号を同時に観測することのできる光プローブを作成し,ランクの大小に従って,亀裂等を弁別することのできる階層型システムを開発した.
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