研究概要 |
「音を聴くと,色が見える」という現象は「色聴(colored hearing)」と呼ばれており,心理学の分野で共感覚(synesthesia)の1つ,すなわち1つの感覚が本来独立であるはずの別の感覚を喚起する非常に興味深い現象として知られている.本研究では,色聴現象を客観的に計測するとともに,色聴のない一般人に対しても色聴を利用して調和の取れた映像音楽コンテンツを提供することを目的に,以下の課題を実施した. (1)fMRIによる色聴現象の計測 17年度では,色聴保持者が音楽視聴時に色知覚領野V4/V8において脳活動が見られることを確認した.18年度はさらに詳細な分析として,色聴能力を持っ人2名および色聴能力を持たない11名について音楽聴取時の脳活動をfMRIを用いて計測を行い,比較解析を行った.得られたfMRI計測データより,紡錘状回,小脳,下頭頂小葉および上前頭回において色聴保持者特有の活動が確認された.この中で紡錘状回ではV4/V8付近の領野(いわゆるV4連合領野)において賦活がみられ,かつ,小脳と近接した部分において,小脳と同期的に賦活が生じている可能性が確認された.この結果は,小脳の賦活に伴って色知覚部位が賦活するというcross-wiring仮説を裏付ける証拠となると考えられる. (2)コンテンツ制作への応用 17年度では,CMに用いられる映像と音楽の関係を解析し,映像と音楽が企業のイメージに添って選ばれていることを定量的に示した.18年度はさらなる解析により,広告主によらない純粋に音楽と映像のみの関係において,フラット系(へ長調など)の音楽には鮮やかな色彩の映像が使用され,シャープ系の音楽(ト長調や二長調)には落ち着いた色彩の映像が使われるなどの関係があることを明らかにした.
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