研究概要 |
岩手県紫波町の2連鋼鈑桁橋である下梅田橋において,平成17年〜平成19年度に3回の実橋載荷試験を実施した.静的載荷試験では,15tf,20tfトラックを対象橋梁の計測径間および隣接径間に載荷させ,2径間全体にわたる各主桁のひずみや変位を計測するとともに,支点近傍ウエブや桁端部ソールプレート近傍の局所ひずみを多点計測した.それらの結果とFEM解析結果を比較検討することにより,可動支点が水平移動拘束されると支点部から広範囲にわたって圧縮ひずみが発生することが分かるとともに,支点近傍の複雑な応力状態をほぼ明らかにした.また、実橋載荷時に変位計を用いて橋脚の水平変位を、高精度傾斜計を用いて支承回転角や橋脚の傾斜角を計測した.その結果から支承が拘束されても支承回転角は発生していることや中間橋脚が荷重載荷時に水平移動していることが分かった.次に動的載荷試験では,常時微動測定,トラック走行試験,砂袋落下試験,実稼動験を行い,それらの試験結果とFEM解析結果を比較検討することにより,供用中の橋梁は,無載荷状態と異なる固有振動数を有することが分かるとともに,2連単純鋼鈑桁橋の固有振動数や動的挙動に支点拘束や中間橋脚の水平変位が大きな影響を与えていることが分かった.トラック走行試験では,3年間の試験結果を比較検討することにより,トラック車両の荷重,速度等が下梅田橋の動的特性にどのような影響を与えるかを明らかにすることができた.また,支点部の動ひずみ応答曲線を移動平均法を用いて静的曲線に変換し,逆解析を用いて走行荷重を推定する手法を提案し,実用性を確認した.最後に静的載荷試験より得られる支点近傍点のひずみ実測値と動的載荷試験より求まる実測基本固有振動数を用いて既設鋼鈑桁橋の可動支点部の拘束状況と床版の経年劣化度を同時に判定する簡易健全度評価手法を提案し,2連鋼鈑桁橋,単純鋼鈑桁橋に適用し提案手法の妥当性を確認した.
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