研究概要 |
1.交通ネットワークに重要な役割を果たしている橋梁構造物の迅速な点検を可能にする新しい構造損傷推定理論として橋梁-走行車両連成振動メカニズムを考慮した時間領域での橋梁損傷推定手法の開発を行った.橋梁の損傷推定の基本的な考え方は損傷による部材剛性の変化を橋梁-車両連成振動の動的応答から推定することであり,橋梁-車両連成系の運動方程式から橋梁の損傷を推定する要素剛性指標に関する支配方程式を誘導することに成功した. 2.橋梁損傷推定法としての適用可能性を検討するために,まず,路面凹凸を有する桁橋の走行荷重下の曲げ振動をモード法によりシミュレーションする.シミュレーションから得られた時系列を測定データと仮定し損傷推定を行った. (1)推定のロバスト性を高めるためにティホノフ正規化(Tikhonov regularization)を逆解析に導入し,ノイズ等の影響による不適切問題(ill-posed problem)を避けるようにした.また,ティホノフ正規化(Tikhonov regularization)以外にTotal Least Square法の適用性の検討も行った. (2)その結果,ノイズレベル15%を想定した場合,ティホノフ正規化(Tikhonov regularization)により誤差を4%以内での精度で損傷を推定できるようになった.また,Total Least Square法により推定精度がさらに向上することを確認した(ノイズレベル15%を想定した場合,2%以内の推定誤差). 3.所属研究機関が保有している模型橋梁走行実験装置を用いて本研究の損傷推定手法の精度を検証するため,模型桁2体の製作し,模型桁橋の走行実験を行った.実橋での実測路面凹凸に基づき,1昨年度整備した模型桁上に1/10スケールの路面凹凸を製作した.また,模型車両および橋梁の振動特性を把握するため自由振動実験を行った.走行実験では,振動特性が異なる2種類の模型車両および2種類の走行速度で合計12回の実験を行った.現在,実験データ分析と同時に損傷推定用のベースラインモデルの検討を行っている.
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