研究概要 |
昨今の異常気象による集中豪雨の発生頻度の増加とともに土石流災害の危険性は増大しているにも関わらず,災害予防的な予算は削減傾向にある.本研究では,砂防構造物の耐衝撃性能を正確に評価し,ムダのない合理的な設計法の確立に寄与する解析手法を提示することを目的としたものである.そのため,従来の設計法の問題点(土石流荷重の適切なモデル化に関する問題,構造物と土石流の相互作用に甚つく動的応答特性が反映されていない点)を踏まえ,現実に忠実なモデル化に基づく数値解析を行い,砂防構造物の安全性照査法の精度を飛躍的に向上することを目指したものである. 具体的には,本研究の成果として以下の内容を得た. 1)粒状体として理想化可能な土石流と構造物の動的応答を統一的にモデル化・解析するためのべ一スとなる「粒子法」を固体に適用した衝繋応答解析プログラムを完成させ,RCはりモデルの衝撃応答シミュレーションを実施した. その結果,RCはりの曲げやせん断破壊を「粒子法」を用いて良好に再現できることを確認した. 2)2次元粒子法による弾性衝撃応答解析により,固体の動的応答における自由表面境界の取り扱いと解析精度の関係を明らかにした.さらに,弾塑性応答解析を試みて塑性の取り扱いに関する収束性・精度上の問題点を明確にした. 3)実構造である「鋼製枠砂防えん堤」の衝撃応答解析を例題として3次元粒子法を適用し,本研究の目的である土石流と砂防構造の一体解析が可能であることを確認した. これらの成果をもとに,土石流の砂防構造物への衝突を再現した耐衝撃性能照査シミュレーションソフトの開発を行う予定である.
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