研究概要 |
橋梁や建物などの野外構造物は大気乱流場の中に常に晒されているので,その荷重は乱流の影響を強く受ける.従って,大気のような高強度大スケールの乱流場をできるだけ忠実に実験的に再現してモデルを使って実際に受けるカを予測することは工学的に重要な課題である. 本研究の目的はマルチファン型風洞を用いてできるだけ高強度で大スケールの乱流場を生成することである.マルチファン型風洞は99個の小さな送風機を独立に運転できるのでその自由度は高いが,どのような運転を行えば高強度大スケールの乱流場を生成できるかはよく分かっていない.基本的な運転法として1)「一様アクティブ法」,2)「擬似格子法」などの運転法があるがいずれも大気乱流特性との隔たりは大きい. 「アクティブ格子法」と称して1)と2)を組み合わせたような運転法を試みた.この方法では,運転命令として,低周波数の単一正弦波を入力して,乱流スペクトルが低周波数側に増幅されるかどうかに着目して乱流場の計測を行った.正弦波擾乱の周波数を0.02〜2Hzの範囲で変化させ,乱れ強度,乱れスケール,パワースペクトルなどを調べた.結果は,入力信号のシャープなピークを除いて乱流スペクトルにほとんど変化は見られなかった. 風洞の更新作業によりファンを逆回転して吸い込みが制御可能となった.吸い込みの効果は吹き出し直後の混合作用を最大にすることやファンごとの入力信号に位相差を与えると撹拌が促進されることなどを明らかにした.しかるに,外部から強制的に与えた乱れの周波数に対応する脈動成分が残存するという欠点は克服できていない. 吸い込みファンと吹き出しファンをフラクタル状(部分的な配置パターンの中に全体的な配置パターンを含むようなもの)に配置させる方法を試みた)等方性(どちらの方向にも乱れ方が変わらない性質)の基準はほぼ満たしているものの,非一様性(すなわちある断面内で流速が均一でない性質)が比較的下流の広い範囲で残存した.乱れのスケールも期待したよりも小さなものであった.
|