研究概要 |
本研究課題では,2ヵ年の研究期間において腐食損傷した実鋼部材の腐食形状の再現性およびその残存耐荷力評価について検討した. 平成17年度は,鋼曲げ部材に着目し,まず実際に腐食環境下にあった鋼部材の腐食形状を,新たに開発した表面粗さ計測装置を用いて,詳細に計測した.さらに腐食レベルの異なる5体の供試体について,腐食性状と残存耐荷力との関係を把握するために,曲げ耐荷力実験を実施した.得られた結果をまとめると以下のようになる. 1.実際に腐食環境下にあった腐食程度の異なる5体の鋼部材について腐食形状を,レーザ変位計を用いた表面粗さ計測装置で緻密に計測した結果、フランジ縁端部に観察された波状や皿状の腐食を精度よく捉えることができた.また、腐食量と部材の方向あるいは腐食面との関係は,明確な傾向は見られず,より局所的な風向やその他の要因によって腐食が進行するものと考える. 2.腐食した鋼部材を曲げ部材として耐荷力実験を行い,腐食形態と残存耐荷力および終局モードについて考察を行った.腐食した鋼部材の曲げ残存耐荷力は,供試体の平均腐食率と線形関係にあった. 平成18年度は,圧縮柱部材を対象に実際に腐食環境下にあった鋼部材の腐食形状計測および耐荷力実験を実施した.また,19.5年間海洋曝露を行った鋼アングル材の表面形状計測装置を用いて腐食表面形状を精緻に計測し,腐食性状データの蓄積を図った.得られた結果をまとめると以下のようになる. 1.腐食環境下にあった腐食程度の異なる4体の柱部材の腐食形状をレーザ変位計を用いた表面形状計測装置を用いて緻密に計測し、腐食分布を明らかにした.また、圧縮耐荷力実験を行い,腐食形態と残存耐荷力および終局モードの関係を明らかにした. 2.19.5年間海洋曝露を行った鋼アングル材について,表面形状計測装置を用いて腐食表面形状を精緻に計測した結果、飛沫帯・干満帯・海中部それぞれの腐食性状の特徴および腐食速度の変化を把握できた.
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