研究概要 |
1.洪水リスク認知がもたらす資産被害軽減効果に関する基礎的分析 洪水リスク認知がもたらす家計の自主防災行動変化を通じた資産被害軽減効果を捉えるモデルを構築した.このモデルを用いて,家計の居住地移転と災害保険加入に着目し,その相互依存関係を考慮した上で洪水リスク認知がもたらす資産被害軽減効果について分析したところ,家計があるレベル以上洪水リスクを認知しないと保険加入が促進されず,便益を得られない可能性があることなどが示された. 2.洪水リスクに対する合理的な立地分布への誘導策の検討 詳細な立地分布を多期間に渡って世代別に推定するために,ファジィ推論とGISデータを用いた立地均衡モデルモデルを開発した.このモデルを用いて,治水対策,土地利用規制,洪水リスク認知促進策を想定し,各施策の有効性を検討した.その結果,住民が洪水リスクを正しく認知すれば,住民自ら安全な地区に移転し,都市圏全体の洪水リスクを低減させる可能性があることが示された. 3.地域住民の洪水リスク認知と自主防災行動とのズレ,およびその改善策に関する考察 洪水災害に対する15種類の自主防災行動(事前の備え)を対象に,住民へのアンケート調査を実施し,洪水リスク認知度評価モデルを構築した.このモデルを用いて,リスク認知度と自主防災行動とそれに対する自己評価とのズレについて分析し,自主防災行動促進に関する課題とその解決策について整理した. 4.洪水災害に対する自主防災行動とその促進策に関する検討 地域住民がどのような思考過程で自主防災行動を実施しているのかを明らかにするために,自主防災行動モデルを構築した.このモデルを用いて,住民の洪水災害に対する備えに関する行動を再現し,岐阜市精華地区を例として施策効果を検討した.検討した7施策中では「学校で行われる防災訓練に参加」が最も地区全体の地域防災力を促進させるという結果を得た.
|