研究概要 |
1.地方民鉄の都心結節・LRT化・既存バス路線再編計画実施後の需要予測と費用便益分析 地方鉄道の廃止が相次いでいる一方で,LRTへの期待が高まっており,各地でその導入が計画されている.熊本電鉄でも,路線の都心乗り入れとシステムのLRT化・既存バス路線再編を骨子とした計画案を発表した.沿線住民を対象に実施したアンケート調査より,沿線住民のLRTへの転換や自治体の財政支援に対する意向を明らかにした.また,最新の技術を用いた総合的な需要予測,および費用便益分析を行った.その結果,本LRT化計画案は社会経済的効率性だけでなく事業採算性も高いプロジェクトとなる可能性があることが示された. 2.地方バス路線再編の検討と公的補助負担の公平性の検証 平成13年に地方バス補助制度,平成14年には道路運送法の改正が行われたが,熊本県では,それらに加えて県単独補助制度を平成19年に改正することを予定している.バス事業を取り巻く環境は,このような制度の変更の影響に加えて,平成の大合併として加速度的に進んでいる市町村合併による地域構造の変化の影響も受けている.そこで,バス事業の規制緩和,市町村合併,および熊本県単独補助制度の改正を踏まえた生活交通対応の状況を把握するために,熊本県下の全市町村に生活交通対策の現状についてアンケート調査を実施した.熊本県下の各市町村の生活交通対策の取組みへ道路運送法や補助制度の改正,市町村合併が及ぼした影響を分析し,今後の地方部における生活交通の再編の課題を探った. 3.公共交通利用促進ためのMD法,および需要予測のためのBI法の適用可能性 熊本電鉄は計画している市電入れとシステムのLRT化を骨子とした鉄道活性化計画のような新規交通施策に対する需要予測手法としては,従来は四段階推計法が用いられている.本計画案に対して,非集計型のRPモデルによる交通機関分担と公共交通機関ネットワークへの確率配分を組み合わせた需要予測を行った.一方で,低床車両による乗りやすさや車両デザインなど,LRT固有の特徴を手段選択モデルに導入したりすることが難しいなどの問題点もある.そこで,行動意図法(BI法)を本計画案に対する需要予測に適用し,従来法による予測結果と比較することにより,新規交通施策の導入による交通需要予測にBI法を適用する際に考慮すべき知見を得た.
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