研究概要 |
我が国では人口減少や高齢化が今後著しく進行する.さらに国と地方合わせて770兆円の長期債務残高(2006年度末)が存在するという財政赤字に直面している,厳しい財政状況の中で,公共的サービスを必要とする人が増える環境におかれて,地方公共団体は難しい政策執行を迫られている.とくにこのような状況は小規模な団体において,顕在化してきている.水の供給や排除,廃棄物の処理などは地方公共団体の扱う重要なサービスである.上述のような小規模自治体の状況を踏まえ,環境施設の整備計画や維持管理における考え方を,人口や経済が右肩上がりであることを基本にしてきたこれまでのものを改めていく必要が生じている.本研究では,あらたな環境計画や管理の方策を構築することを目指し,具体的な課題に対する検討を進めるとともに,普遍的な手法の開発を試みた. まず人口減少や高齢化など,小規模な自治体のおかれている現状について概括し,環境施設の整備計画や維持管理の課題を整理した. つぎに,環境施設における人口減少,高齢化,小規模事業に関する具体的な課題を取り上げ,その解決のための方法を検討した.施設整備の方法に関する課題では,集中型で行うか分散型で行うかを,汚水処理システムおよびごみの分別収集システムを取り上げて議論した.施設維持管理の方法については,山間過疎地に広域に分散した多数の施設を効果的に巡回点検する計画策定法と,下水道への接続を促し維持管理の財源確保方策の検討方法を提案した.さらに自治体財政及び地域経済への影響を考慮して汚水処理整備を行う方法を検討した. 以上のような具体的研究をもとに,小規模自治体における計画管理,各種政策を進めるにおいて利用できると考えられる個別の手法について検討した.世代別,政策別満足度を考慮して政策を進める方法,政策の波及効果考慮する方法,顕在化しないニーズを考慮する方法,政策波及効果を考慮する方法,GISを利用する方法などを提案した.
|