研究概要 |
本研究は鉄筋コンクリート建築物を対象とし、積層部材内部における剥離発生メカニズムを解明し、効果的な剥離防止技術を実験および数値解析の両面から検証して提案するために実施した。 本研究では特に温冷・乾湿ムーブメントによる剥離を対象として検討を行い,解析ではFEMによって気温が急激に低下するときにコンクリート躯体と仕上げモルタルとの剥離発生が生じやすいことを明らかにした。 実験では,日射吸収量の多い斜め外壁では,温度上昇がもたらす温冷ムーブメントが剥離作用を促進するため,日射による温度上昇を可能な限り制御することが接着一体安全性を確保する上で重要であることを定量的に示した。また,モルタルとコンクリートの界面への水の浸入は,特に仕上モルタルの変形が拘束される部位では,接着一体性の低下につながるため,降雨による浸水の可能性が高い斜め外壁等の部位では水浸入を的確に防ぐことの重要性を指摘した。 養生期間の影響については,養生環境が10℃,20℃,30℃での適切な養生期間を明らかにした。すなわち,20℃環境下で施工を行う場合には養生期間は3日でも比較的高い品質を保つことができることを示した。また,比較的低温環境といえる10℃環境下では,10日以上の養生期間を確保することで日射・散水に対する抵抗性を高く保つことができることを示した。30℃環境下では日射・散水により接着一体性が低下しやすい傾向が認められ,このことから夏期における施工では初期養生における品質管理が重要であることを指摘した。本実験の範囲では暑中環境では養生期間を14日以上確保することが望ましいことを示した。ただし,今回の研究の範囲では養生期間と強度の関係を定量的に明確にできなかったため,今後更に検討が必要であると考えている。
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