研究概要 |
三原市および呉市において微動観測とボーリングデータに基づいた地下構造モデルを構築し、2001年芸予地震の地震動シミュレーションから地盤の地震時応答特性を推定した。また,三原市および呉市の地下構造モデルを単純化し,その傾斜層の角度や地盤物性値を変化させた数値シミュレーションを行なった。このモデルは,平行成層構造から傾斜層へ移行し,再び平行成層構造になるモデル,U字谷,あるいはV字谷を有するモデルである。以下に得られた知見をまとめる。 1.当該地域のボーリングデータを整理し、データベース化を行なった。 2.微動H/Vスペクトルから、当該地域の地盤の卓越周期分布を把握した。 3.ボーリングデータと地盤の卓越周期T(秒)の相関から工学的基盤以浅の堆積層の厚さD(m)の推定式(D=29.74T+1.209)を提案した。 4.微動アレー観測から、S波速度2km/sec程度の基盤までの地下構造を明らかにした。 5.当該地域では海側の地域と山側の地域では地震時の地盤応答は大きく異なり,特に呉市では,海側の地域の地盤応答値は山側の地域に比べ,周期0.5〜1秒で5倍,1〜2秒で3〜4倍程度大きくなる。 6.FEM解析の結果,地盤応答値は地下構造が急変する地域で大きくなり,1次元計算の結果を上回る。 7.傾斜層を有する地下構造では,傾斜が始まる付近(100〜200mの範囲内)で2次元的な波動伝播の影響が顕著に現れる。この影響は傾斜の角度によって異なる。 8.傾斜層を有する地下構造では,傾斜が終わり,平行成層構造へ移行する領域でも2次元的な波動伝播の影響が顕著に現れる。この影響は,傾斜の角度が大きくなるほど,傾斜から離れた遠方まで及ぶ。 9.V字谷を有する地下構造では,谷底の領域で2次元的な波動伝播の影響が大きくなり,この影響はV字谷の傾斜が急なほど顕著である。
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