研究概要 |
建築空間の視覚的表層構造と意味的深層構造とを関係づける数理論理的構造モデルに基づき、空間構成に基づいて作曲を行う複数タイプの計算機システムを構築した.これらのシステムに等持院庭園,桂離宮庭園の回遊データを与え,回遊シークエンスの視点毎に異なるシーンの構造を音楽に変換した1庭園の空間シーケンスとシステムが生成する音楽を同時に提示する実験を実施し,空間構成と音楽の構造との関係を考察した. 空間構成と音楽を関係づけるレベルに応じて三種類の実験を行った.作曲に用いられる音や旋律に対する操作の適用順序のパターンを抽出し,空間構成を送出する設計操作の適用パターンにマッピングする試みを行った.庭園空間の回遊体験における情感や心象の動きと音の構成との関係を把握するための実験を行った.視覚対象と聴覚対象の有無が強い関係性を持つことを確認した.それぞれの情感や心象について同一じ形容詞がある場合,その形容詞が示す概念を介しての空間構成と音楽の関係性も認められた.庭園の抽象的構造と音楽の抽象的構造を対応づける実験を行った.空間を体験する場合,ある祖点からの景色は短い時間で体験される.一方,その景色に対応する音楽の体験には多少の演奏時間を要する.これらの対応付けにはさらなる検討が必要である.また,庭園回遊時に逐次構築されてゆく全体的な空間イメージと音楽の全体的な構造との対応付けの方法を検討する課題が新たに生じている.
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