研究概要 |
本研究の目的は,京都の歴史的市街地における京町家の建築様式にみる伝統的空間構造を継承する街区のモデルを提案することである.京都の歴史的街区においては目に見えて京町家の減少をともなった民間の高層共同住宅などが建てられ,その存続の可能性は危機的状況にある.その危機の実態を街区の特性に応じて把握し,利害対立による変容の方向を制御するデザイン・ゾーニングの方法と街区モデルの具体的イメージを提案した. この研究は,(1)町家の空間構造の歴史的検討,(2)歴史的街区の現状の分析,(3)町家共存型街区モデルの提案の3つの部分により構成されている. (1)では,中庭の存在を視点に歴史的に考察した.間取りでは,桂離宮などに代表される雁行型プランとの共通性あるとした.中東アジアの古代に発生したコートヤード・ハウスとも比較検討した.(2)では,歴史的街区支える町家の存続条件,工房や店舗等への転用利用,一戸建て路地型開発等について検討を加え,町家活用の可能性,町家存続の地域コミュニティへの貢献について提言した.(3)では,2つの街区モデル(A街区とB街区)として街区再生計画を提案した.街区内協調空間を再生する方針にそくして,街区変容をコントロールするデザイン・ゾーニングの手法とともに街区再生計画制度の提案を行った.また,新しいタイプの共同住宅をサブモデルとして提案した.今後の課題として,住民参加の機会拡大をはかるためにもモデルのオルタナティブを検討する必要性を指摘しておきたい.
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