| 研究概要 |
Ll_2型構造をとる金属間化合物Ni_3Alにおいて見出された力学緩和現象が,Ni原子のサイトを占めるアンチサイトAl原子の拡散ジャンプに起因することを本研究代表者は数年前に示唆し,これを証明する実験を進めてきた.本研究の初年度には,Ni_3Alにおける定比組成(25mol%Al)からの組成のずれの影響を詳しく調べた.その結果,緩和速度はAl濃度にほとんどよらず,いっぽう緩和強度はAl濃度が定比組成を超えると急激に大きくなることが明らかになった.これらの結果は想定している機構から予想されるとおりであった.
第2年度は,同じ構造をとる金属問化合物Ni_3Gaについて実験を行い,同様な力学緩和現象を見出した.緩和速度の値と温度依存性はこの緩和がGa原子の拡散ジャンプによると解釈できることを示していた.Ni_3GaにおけるGa原子の拡散もNi_3Al中のAlと同様な機構によりおこると仮定して,得られた緩和時間の値からAl原子およびGa原子の拡散係数を求めた.Ni_3GaにおけるGaの拡散係数の値,温度依存性,組成依存性の全てがトレーサー実験により直接測定された拡散係数とよく一致し,この緩和現象がアンチサイトGa原子の応力誘起再配向に起因することが裏付けられた.やはりLl_2型構造をとる化合物Ir_3Nbにおいて同様な緩和現象を観測するために,その準備として化学拡散係数の測定を行った.
最後に,Ll_2型構造と関連したE2_1型(立方晶ペロブスカイト)構造をとる酸化物における酸素の拡散を同じ原理による力学緩和の測定によって調べるため,(Ba, Sr)TiO_3の試料を作製した.物質の選択と良質の試料作製に時間を要し期間内に測定を行うには至らなかったが,最終的には良好な試料が得られたので,今後順次測定を行い研究を完遂する予定である.
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