研究概要 |
本研究では母物質のバンドギャップ間の電子遷移に対応する励起エネルギーを利用した希土類付活型蛍光体を創製し、発光機構の解明をおこなうことを目的とした。研究は以下の3つに大別される。 1.層状チタン酸化物Sr_<n+1>Ti_nO_<3n+1>:Pr^<3+>(n=1,2,∞)、Ca<n+1>Ti_nO_<3n+1>:Pr^<3+>(n=2)を合成し、発光特性を調べた。これらは,バンドギャップ励起により赤色発光を示し、その発光特性は,Pr^<3+>-O間距離およびPrのサイトシンメトリーに依存することが明らかになった。 2.ペロブスカイトR_<1/2>Na_<1/2>TiO_3:Pr^<3+>(R=La,Gd,Y,Lu)を合成し、構造解析,光学特性の解析をおこなった。La,Gd,Y,Luの順に、A-O間の平均距離およびTi-O-Ti角度は減少し、一方、母体のバンドギャップは増加した。これはTi-O-Ti角度の減少とともにハンド幅が狭くなったことに起因する。すべての試料でバンドギャップ励起により赤色発光が観測され、La,Gd,Y,Luの順に発光ピーク波長は増加した。これはA-O間距離の減少に伴いPr-O間距離も減少し、共有結合性が増加したことに対応する。この系ではPrの基底,励起準位と母体の価電子帯、伝導帯のエネルギー端の相対的な準位が発光特性に強く影響していることがわかった。 3.Prドープペロブスカイト型リチウムイオン伝導体Ca_<0.6>Li_<0.3>Ti_<0.5>Ta_<0.5>O_3:Pr(CLT)、Sr_<0.6>Li_<0.3>Ti_<0.5>Ta_<0.5>O_3:Pr(SLT)を合成し、その発光特性を調べた。CLTは、バンドギャップに対応する紫外光励起により、強い赤色発光を示した。一方、SLTは、バンドギャップ励起による赤色発光よりも、f-f励起による青緑発光が顕著であった。発光スペクトルと格子定数のPr濃度依存性から、CLTではPr^<3+>イオンはAサイトのみに、SLTでは大部分はAサイトに、一部はBサイトに存在することが示唆された。このことからPrの占有サイトが発光特性の重要な支配因子であることが明らかになった。
|