研究概要 |
本研究では新規アルカリ土類酸窒化ケイ素(Ca-Si-O-NおよびBa-Si-O-N系)の合成条件を検討するとともに,それらの諸性質,特に蛍光特性について検討を行った。本研究で対象とした化合物は,Ca_3Si_2O_4N_2(N/O=0.5),Ca_2Si_3O_2N_4(N/O=2.0),さらにBaSi_6ON_8(N/O=8.0)である。また,これらの化合物に種々の希土類元素(Eu_2O_3,Yb_2O_3,CeO_2,Tb_4O_7およびSm_2O_3)を付活剤として添加し,蛍光特性を調べた。 最初にCa_3Si_2O_4N_2の合成条件を検討した結果,酸化カルシウム(CaO),酸化ケイ素(SiO_2)および窒化ケイ素(Si_3N_4)の混合粉体を1450℃で2h,窒素雰囲気中で加熱すると目的の化合物が得られることが分かった。得られた化合物に付活剤を添加して調製した(Ca_<1-x>RE_x)_3Si_2O_4N_2(RE:希土類元素(付活剤))の中で,(Ca_<1-x>Sm_x)_3Si_2O_4N_2および(Ca_<1-x>Tb_x)_3Si_2O_4N_2はそれぞれ赤色および緑色発光を示した。つぎに,Ca_2Si_3O_2N_4を合成するため,出発粉体としてCaOおよびSi_3N_4を選択した。これらの粉体を化学量組成に調製したのち,1550℃で2h,窒素気流中で加熱するとCa_2Si_3O_2N_4の単一相が得られた。この化合物にEuを置換固溶させた(Ca_<1-x>Eu_x)_2Si_3O_2N_4(x=0.01-0.1)の励起発光スペクトルを測定したところ,青色LEDの465nmの波長を含む幅広いスペクトルが観測された。これらの化合物の発光波長は,Eu添加量(x)が0.01から0.1に増加すると606から620nmへと長波長側にシフトし,橙色〜赤色の発光を示すことが分かった。さらに,BaSi_6ON_8の合成条件を調べたところ,炭酸バリウム(BaCO_3)とSi_3N_4の混合粉体を175℃で2h加熱すると,目的の化合物が得られることが分かった。この条件で合成した(Ba_<0.996>Eu_<0.004>)Si_6ON_8は,301nmの励起により503nmの青緑色発光を示し,その相対発光強度(標準試料:CaWO_4)は2.7に達した。
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