研究概要 |
本研究では,連続貫通した細孔を有する人工関節,人工骨,人工歯根用医療用多孔性チタンを創製する.ここで,細孔は連続貫通である必要があり,この目的のために生分解性繊維を利用し,これをチタン母材に分散させる.術直後は生分解性繊維が強化相として働くために通常の多孔性チタンと比較して高い強度を有する.また,生体内で生分解性繊維は分解するために,術後ある一定期間を経て連続貫通した細孔を有するようになる.このとき,骨組織が侵入できるため,骨との堅固な力学的結合が見込まれる. 本研究では,まず,母材として純Ti粉末,強化相としては生分解性繊維であるPLLA繊維を用いた.放電プラズマ焼結(SPS)の条件は150℃,5分,50MPaである.これにより,5および15vol%のPLLA繊維が添加した試料を作製した.しかし,作製した複合材料のTi母材が焼結されておらず十分な強度を得ることができなかった.そこで,次善の策として,生体内において分解速度の制御を可能とした生体材料作製を目標とし,孔質チタン焼結体を作製した.多孔質チタン焼結体はチタンと塩化ナトリウムの混合粉末をSPS法にて焼結させた.得られた結果をまとめると,1)Ti粉末とNaCl粉末の混合粉末をSPS法で作製した焼結体は,NaClの融点が高いため,比較的高い温度で焼結が可能である.その結果,NaCl溶解後においても多孔質Ti材料の破壊は生じなかった.2)ミクロ組織観察の結果より,Ti母相の焼結が完了しており,多孔性Tiの創製に成功した.またビッカース硬さ試験より,TiとNaClの複合材ではNaCIが強化の役割を果たした材料である.3)Ti-70vol.%NaClから作製した多孔質Tiの細孔はすべて開口細孔であり,表面から全ての細孔が繋がっている.多孔質Tiに生分解性ポリマーを浸透させれば繊維状の生分解性医療用材料の作製が期待される.4)ビッカース硬さ試験,摩耗試験の結果より,硬いTi母材にやわらかいNaClを分散させたことにより耐摩耗特性の向上に貢献していることが確認できた.
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