研究概要 |
超音速フリージェットPVDは,不活性ガス雰囲気中で皮膜となる原料を蒸発させることにより生成させたナノサイズの粒子(ナノ粒子)を超音速(3.6km/s以上)のガスの流れにより搬送,基板上に堆積,成膜させる新しい成膜原理によるコーティング技術である.本法の成膜において最も重要なキーテクノロジは,生成直後の高い表面エネルギを保ちつつ,ナノ粒子を基板に積層させることである.しかし,皮膜組成の制御性の観点から,異種ナノ粒子の精密な混合は本法にとって必要不可欠な技術である.本研究は,超音速ガス流により基板まで搬送される異種ナノ粒子を凝集・肥大化させることなく,活性な状態のままのナノ粒子を基板に積層・成膜させることを研究目的としている. そこで,研究代表者らが先に特許出願(廣木,湯本ら,流体混合装置,特願2004-173484)した同軸対向噴流による自励振動現象を用いたミキサーを,超音速フリージェットPVD用に新たに設計開発し,本装置に組み入れ成膜を試みた.開発したミキサ0は,機械的可動部を必要とせず,流体要素のみでナノ粒子を含む二つの固気混相噴流を精密に混合させることが可能なフルイディクデバイスである. 本研究では,本ミキサーにおいて発振現象を得る条件(ミキサー形状,噴流の流速,圧力,流量など)を熱流体解析ソフトにより解析した.その結果,二つの噴流をミキサーに導入する導入口のアスペクト比および二つの噴流の流速・圧力が最適な発振現象を得るための条件であることを明らかとし,解析結果を基に製作したミキサーを組み込み成膜させた皮膜において,ナノ粒子を凝集させることなく異種ナノ粒子が精密に混合させた皮膜の成膜に成功した(数3〜20nm程度の粒子が混合した欠陥の無い高密度皮膜の形成を達成).
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