研究概要 |
ガラス中のイオンを交換することによって屈折率分布を形成し,平板レンズや光導波路など微小光学部品を作製する技術がある.技術のkey pointは,目的とする屈折率分布を得るためのイオン交換条件を見出すことにある.イオン交換過程をシミュレーションして,それらの条件を知ることが最良と考えるが,開発現状はその段階にない.したがって,基礎科学と開発研究を橋渡しする夢をもって,研究を計画した. 本研究では,拡散理論に基づいてイオン交換式を誘導し,イオン交換中の濃度分布を逐次計算できること,そして,実験的にも検証してシミュレーションの信頼性を確認することを目的とした.そして,分布設計の自由度を上げ,実用的観点も重視して,(1)銀を多量に含むガラス系の開発,(2)3種イオン間の交換過程の取扱いを計画の基本においた.その結果,実験試料に銀含有ホウリン酸塩系ガラスを開発し,交換イオンとしてNa^+,K^+,Ag^+を選んだ.誘導したイオン交換式から交換時間による濃度分布を計算するため,差分法を用いた計算プログラムを作成した.計算に必要な拡散係数は放射性同位元素を用いて求めた.一方,計第に用いた条件と同一条件で実際にガラスのイオン交換を行い,EPMAを用いた定量分析からその濃度分布を測定した.計算と実験における濃度分布の一致の程度は理論計算の信頼性のバロメーターとなる.ガラスと溶融塩,ガラスとガラスの間のイオン交換について実施し,両者を比較した.その結果,実験したすべての組み合わせにおいて,両者の濃度分布は議論の余地がないほどよく一致した.そして,濃度分布から屈折率分布に変換する計算も可能にした.さらに,本方法による予測は妥当であるとの結論を得たので,屈折率分布デバイス開発を支援するためのいくつかの計算シミュレーションを行い,屈折率分布を形成するためのイオン交換プロセス条件を見出す有効な手段であることをデモンストレーションした.
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