研究概要 |
本研究では,凝固温度範囲が黄銅などに比べて数倍も広いために,砂型鋳物における機械的性質の劣化要因となる微細な引け巣などの鋳造欠陥や金型鋳造の際の凝固割れを発生するBi系の鉛レス青銅とリン青銅を素材として,鋳造欠陥や凝固割れの改善策として有望と考えられるレオキャスト(半凝固鋳造)の有効性を調べた. レオキャストには微細な固相粒の半凝固スラリーが必要であり,当初は,課題名の一部に挙げたリニアポンプ型の振動押出方式で製造を試み,少量は確かにこの方式で粒状化が可能であったが,レオキャスト成形できるような量を得ることはできなかった.この方式に代わるものとして,高強度アルミ合金で提唱してその効果が確認されたロータ回転方式を採用して,先ず,Bi系鉛レス青銅で製造を試みた結果,固相の平均径が約50μmの半凝固スラリーが容易に安定して所定量を製造することができるようになった.また,実際にディスク形状にレオキャストしたところ,内部では偏析が少なくて均一に粒状化した組織となり,この半凝固スラリーが高流動性であることが確認された.しかしながら,極端に低延性・低強度であり,急冷によって生成した微細に発達した元液相部の存在に起因することが,スリーブ内での加圧凝固材の優れた延性・強度によって,確認された.一方,リン青銅においても同様の半凝固スラリーが同じロータ回転方式により製造可能であることが分かった.また,スリーブ内での加圧凝固材のミクロ組織を観察した結果,従来にない抜群の引張特性が期待できる,共晶相が粒間に微細に分布したと思われる明瞭で平均径が20~30μmの微細な結晶粒組織が得られた.
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