研究概要 |
イオン液体を用いた新規なバイオプロセスおよび分離プロセスの開発を目的として研究を行い,次のような成果を得た. 1.イオン液体含浸膜分離システムの開発 イオン液体含浸高分子膜により脂肪族化合物から芳香族化合物の選択的分離を行うことができ,従来の浸透気化法などよりも優れた分離係数を示す膜分離システムを開発することができた.これらの応用として石油留分からの窒素化合物や硫黄化合物の除去に関する研究を行い,これらの化合物が選択的に分離除去できることを示した.また抗生物質の1種であるペニシリンGのイオン液体による抽出および膜分離系を構築し,イオン液体含浸膜分離系において初めて上り坂輸送を達成した.さらにこの成果を乳酸の抽出発酵へ応用した. 2.イオン液体中の全細胞生体触媒を用いたエポキシドの光学分割 生理活性物質の中間体として重要であるラセミ体のエポキシドの選択的加水分解による光学活性ジオールの生成にイオン液体を使用した二相系反応を用いることを検討した.内在するエポキシド加水分解酵素を高発現することが知られているRhodotorula glutinis ATCC 201718を用いて,エポキシヘキサンの加水分解を行ったところ,酵素精製することなしに全細胞の状態で(R)一体のエポキシドに対して高いエナンチオ選択性を示すことを見出した.高い基質濃度では有機溶媒を超える高いエナンチオ選択性を示し,また最も疎水性で最も粘度の低いイオン液体Tが反応性も高く,非常に高いエナンチオ選択性を示すことを明らかにした. 以上環境適応型溶媒であるイオン液体を用いた新規なバイオおよび分離プロセスを検討し,これまでの有機溶媒にはない極めて興味ある結果が得られた.
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