研究概要 |
アンモニアIRMS(赤外/質量分析)-TPD法によって,各種ゼオライトのBronsted・Lewis酸性,さらには特有の赤外吸収バンドを示すOH基のBronsted酸としての量と強度を測定できるようになった. USYを中性のEDTA(エチレンジアミン四酢酸)塩で処理すると(以後この処理後のゼオライトをEDTA-USYと記す)強いBronsted酸性が増加する.EDTA-USYには歪んだ四配位の骨格外A1が存在することから,これが強いBronsted酸性の原因と考えられる.このA1種は16Tの高磁場でMQ-NMRを用いることで特定できた.これが強いBronsted酸性の源であることが初めて明らかとなった.新しいOH基が観察され,強いBronsted酸強度が確認された.これはアルカン分解活性点の初めての直接観察である. 量子化学計算をEDTA-USYに応用し,ヘキサゴナルプリズムの3つの酸素に配位した骨格外A10H種が,隣接する酸性OH基のBronsted酸強度を高め,これがUSYの強いBronsted酸性とアルカン分解活性の源であることが特定された.また同じ位置にCaなどを配位してもBronsted酸性が強くなることがわかった. 以上のように強いBronsted酸点の構造があきらかとなった.そこでこれらの触媒をオクタン分解反応に適用した.実験室レベルではあるが,次世代クラッキング触媒の萌芽を見出すことができた. 他にもいくつかの発展が得られた. (1)重質油の分解に期待されるメソポーラスゼオライトの酸性質を初めて定量した. (2)同様に期待されるWO_3/ZrO_2などの酸性質を初めて定量した. (3)芳香族分子の吸着熱を簡便に測定する方法を開発した.
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