研究概要 |
タンパク質を網羅的に定量解析可能な抗体マイクロアレイを構築するためには,特異性や親和性の高い抗体を網羅的に作製する技術が不可欠である.本研究は,昆虫に特異的に感染するバキュロウイルス(Autographa californica核多角体病ウイルス)と培養昆虫細胞(Sf9)を利用し,特異性や親和性の優れた抗体を迅速にかつハイスループットで創出できる新たな網羅的抗体作製技術の開発を目的として検討を行ったものである.マウス由来の抗体Fabフラグメントを構成するFdフラグメントまたはL鎖の一方を,バキュロウイルスのエンベロープを構成する糖タンパク質gp64との融合タンパク質として発現し,もう一方を分泌タンパク質として発現するような組換えバキュロウイルスを作製した.調製した組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清を酵素免疫測定法(ELISA)により分析したところ,ウイルス未感染細胞の培養上清と比べて,優位に高い吸光度が得られた.また,組換えバキュロウイルスを感染させてから24h後の昆虫細胞を蛍光標識した抗マウスIgGで処理し,フローサイトメーターで分析したところ,ウイルス未感染の細胞と比較して,ウイルス感染細胞は高い蛍光強度を示すことがわかった.これらの結果から,抗原結合活性を有するFabフラグメントを表面に提示した組換えバキュロウイルスの作製に成功したと考えられる.また,セルソーターを用いて目的の抗体分子を提示したウイルス感染細胞を迅速にかつ簡便にスクリーニングできる可能性が示唆される.
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