研究概要 |
実験では,各々独立に測定される速度、比推力を用いて,各条件における推進性能および機構を比較検討した.理論解析では,相対論的な粒子を噴射したときに発生する推力、比推力について検討した. (1)各種レーザ照射条件における推進性能の比較・評価:レーザ装置(Nd:YAGレーザ(波長:1064nm,パルス幅:5nsec,エネルギ:1J/pulse)を使用した場合について,レーザの照射条件を変化させ,各場合の推進性能を測定・評価し,それぞれの結果について比較・検討した. (2)数値解析による推進機構の検討:開発した1.5次元粒子シミュレーション・コードを用いて,高強度レーザが固体に照射された際に,固体中から粒子が前方側に加速される様子が模擬できた.ここでは,この粒子が加速される機構,すなわち如何にして高強度電場が発生し,粒子が加速、放出されるかなどについて検討した. (3)ターゲット電位・空間電位の計測による加速機構の実験的検討:レーザをターゲットに照射したときのターゲット電位の時間変化ならびにターゲット後方の任意の位置における空間電位の時間変化を計測することで,粒子に作用する静電場および静電力の時間的変化を見積もった.この場合の主たるイオン加速機構は,ターゲットと噴射プラズマ間に発生する電位差(この場合約+100V)によるものであることが確認された. (4)理論解析による相対論的粒子発生時の推進機構の検討:相対論的粒子発生時の推力・比推力について検討した結果,与えられた入力(あるいはエネルギ)に対して相対論的な粒子で発生可能な推力は,粒子の速度が光速に近づくにつれて,光のみを真空中に照射したときに得られる光圧に漸近していくことが明らかになった.また,特に相対論的条件化で発生する推力は一定の入力の下では,粒子の質量流量によらないことも確認された.このことから,「直接光推進」という古くて新しい推進概念への新たな挑戦への道が拓けたといえる.
|